日記

日記

7月31日 日記

いつも通りの日常が終わって、非日常となり、非日常が終わり、いつも通りの日常になったから通ったことのない道を帰った。

夕陽に照らされた住宅街には、人気がない。公園から聞こえてくるはずの子供の声が聞こえない。これまでならけたたましく騒いでいたはずの蝉の声がしない。唯一聞こえてきた音は、ビニールプールではしゃぐ子供の声だった。

 

室外機が吐き出すどんよりとした空気が街をどんどん熱くする。そういえばまだ蚊に刺されていない。住宅街だから室外機はなおのこと多い。暑すぎると蚊も活動しないんだっけか。室外機の目玉がこちらをじっと見ている。蚊が動かない街を人間は動き続けている。どの室外機も目は全て左寄りだ。ということは蝉の声がしないのも暑すぎるからだろうか?室外機から見れば右寄りなのだろうけれど、室外機が意思を持つことは決してないのだからどうでもいい。蝉にとって夏の風物詩はだるそうに歩き回る人間なのかもしれないな。せーので室外機を止めたら気温は下がるのだろうか?蝉は意思を持っているのだろうか?

 

どうでもいいか。

 

バスの窓ガラスのスモーク加工が誰かを日差しから守る。広げられた折り畳み傘は、誰かを日差しから守ってまた畳まれる。誰かを日差しから守った日陰は、朝には誰も守ることのできない日向となる。日向の存在しない真夜中は常に誰をも守り続ける。真夜中は誰からも何も奪わない。私たちは何も奪われていないから。