日記

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6月7日 日記

あの山を三つ越えたら海が見えると、駅で盗み聞きした。山の向こうに幸せがあるなんていう信じられないような、抽象的なことよりは信じていいかなって思ったから、行ってみることにした。今思ってみれば本当に全部がどうてもよかっただけかもしれない。田舎とは言い切れないような微妙な場所だったから、レンタサイクルは一箇所だけあった。到底山道を登れるようには見えないママチャリだったけど、下り坂で乗れるならそれで十分だった。

 

8%の上り坂を越えて、10%の下り坂で叫ぶ。6%の上り坂で立ち漕ぎをし、4%の下り坂で海の存在を鼻で感じる。7%の上り坂で最後の力を振り絞り、7%の下り坂で車と並走する。

 

海はなかった。そこには川すらもなくて、知らない街があっただけだった。でも確かにその街からは磯の香りがする。