日記

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4月13日 日記

 駅までの道で黒猫が死んでいた。雨で濡れたアスファルトの黒に溶け込んでいたから普通に歩いていたら気づかなかったと思う。でも気がついた。黒猫の上に桜の花びらが乗っていたから。弔いの意味かもしれないし、もしかしたら子供のいたずらかもしれない。どちらでも構わないが、自然にそうなっていてほしいとも思う。なんの意味もなく、ただ黒猫の上に花が散っただけであってほしい。

 (生きている)黒猫に前を通られると不幸になるという格言がある。もしそれが本当ならば、死んでいる黒猫の前を横切れば幸せになれるのだろうか。ふと思い立ってその黒猫の前で反復横跳びをしてやろうとして、やめた。もしかしたらどこかの部族では死者の前で反復横跳びをすることが弔いの儀式かもしれないけれど。ここは日本。お焼香のやり方を知らない人であふれているけれど、反復横跳びが死者を弔わないことは知っている。