公園の原っぱで花だけを踏んで歩いた。小学生が白線だけを踏んで家まで帰るみたいに。紫、黄色、赤、紫、青。丁寧に管理されている公園だから花はたくさん咲いている。いろいろなところに咲いているからゲームオーバにならずに公園を出ることができた。
ときおり美しいものが許せなくなる日が来る。それが今日だった。三秋縋がいうように
<意味>や<心地よさ>はいつか人を置き去りにする。<美しさ>は寄り添ってくれはしないが、代わりにずっと同じ場所にいてくれる。初めは理解できなくとも、私がそこに辿り着くまでじっと待っていてくれる。
これは間違いない。ただ、ただ待っているだけというのが気に食わないのだ。でも、そこにあるだけの美しさに対する怒りは最も醜い怒りで、自らが醜悪であることを表明しているようなものだ。それでいいと思ってしまっているから怒りが湧いてくるのだろうけど。
帰りの電車は大雨でひどく遅れていて、はみ出す勇気もなく黄色い線の内側でひたすら待っていた。